人気連載中!はじめての海外一人旅講座

アジアひとり旅|食の文化と一品料理

Yoshiさんが運営する『Backpackers Wire (以下bpwire)』の読者の皆さん、僕は旅のブログ『バックパッカーに憧れて』を運営しているトミーです。

今回は両ブログのコラボ企画で、bpwireに寄稿させていただく運びになりました。

 

かつてbpwireの筆者Yoshiさんがブログを開設した当初、メッセージを頂いたことがありました。

「アクセスを増やすにはどうしたらいいんですか?」

 

それから数年後、僕のブログなど話にならないほど、成長していったbpwire。丁寧な記事作成には、頭があがりません。

しかし今回の企画にあたって、Yoshiさんからこんな一言がありました。

「bpwireには食事のカテゴリーが無いんです」

 

そこで、『バックパッカーに憧れて流』のアジアの旅と食事を、bpwireでご紹介させて頂くことになりました。

どうぞよろしくお願いします。

トミー

まえがき

アジアを旅するようになって時が過ぎた。旅は所詮勤め人の旅。限られた日数のなかでやりくりをする旅をやってきた。都会の喧騒から逃れるように着いたアジアの風は、至福の時間でもあった。

旅はバックパッカースタイル。ゲストハウスに泊まり、旨い飯を食べる。価格はどちらもリーズナブル。旅の最初を振り返ると、それがやってみたい旅だったが、そこから抜け出せない旅が今も続いている。

海外へ出たら、その街の料理を庶民の店で食べる。

旅を追いかけるように、ブログの開設も始めたから、どこかそうしないといけないと思ってるところがあるかもしれない。

そこに加えて一人旅という側面がある。

一人旅は誰かと料理をシェアできない。多くの料理を楽しめない故、どうしても一品料理に気持ちが傾く。

そんな一品料理から感じた、アジアの食の歴史と文化を今一度振りかえってみたい。

アジアの粥

僕はアジアに流れる粥の文化があることは知っていた。だが実際に口にしたのは、旅を始めてからだいぶ後のことだった。

その理由は、粥はどこか病人が口にする食事と思っていたからだ。

それは子どものころに風邪を引くと、母親が作ってくれた粥。水分をたっぷりと含んだ艶やかな白米の上に、申し訳なさそうに乗った梅干し。それが旨いかと聞かれると首を傾げたくなったが、病人が口にする食事とはこういうもんだと思っていた。だから旅先で粥を口にすることはなかった。しかし、その考えが一変した時がきた。

場所はタイの北部、チェンライ。ゆるりとした空気が流れる、小さな街だ。そこで襲った風邪の症状。旅の疲れに加え、ゆるりとした街の空気感に、気が緩んだのだろう。鼻水が止まらず、寒気を覚え、食欲もなくなった。街の薬局で四苦八苦しながら購入した風邪薬を飲むまえに、何か食べ物を胃に入れなければと街を歩くと、目の前に粥の屋台が現れた。粥は病人の食事と思っていた身にとって、この上ない食事だった。奇しくも旅先で初めて粥を口にしたきっかけは、まさに病気になったのがきっかけだった。

屋台は街のシンボル、時計台のすぐ側にある通り沿いにあった。タイ語が理解できなくても、大きな寸胴から顔を覗かせた料理を見て、すぐそれと分かった。料金は一杯25バーツ。そこに卵を5バーツで追加して注文した。


◇チェンライの粥屋台の場所

歩道に並べられたテーブルで、その粥をすすった。すると、今まで描いていた病人の食事のイメージが吹き飛んだ。

たっぷりと入った千切り状の生姜。その生姜がスープによく溶け込んでいる。そう、お粥というよりは、スープご飯に近い料理なのだ。そしてトッピングで入れた卵を箸で割ると、半熟の黄身がとろりと溶け出す。それを軽くスープに混ぜ、ご飯と生姜を一緒に口へ運ぶ。至福の時間とは、このことを指すんだなと頷いた。ただ、タイの粥はこれで終わらなかった。それは卓上に並んだ調味料だった。

オイスターソースをかけては口へ運び、胡椒を振りかけては口へ運ぶ。そのままでも十分に旨かったが、自分の味をつくるタイの屋台文化に触れた時間だった。

それからというもの、旅先で粥を口にすることが増えたが、こんな粥との出会いもあった。

場所はベトナムの首都ハノイ。旧市街の一画にある粥の屋台だ。店は狭い歩道の上に、ベトナム特有のプラスチック製の低い椅子に座って食事をするスタイルだった。腰を下ろし、辺りを見渡しても、メニューも料金表も見当たらない。仕方なく他の客が食べている粥を指差して注文をした。一杯の料金は12,000ドン。日本円で約60円。訪れた時間は朝だから、元々安い物価のうえ、朝食に見合った価格だなと思った。


◇ハノイ旧市街にある粥屋台の場所

注文してからすぐに出てきた粥を見ると、黄色がかった、とろみのある粥だった。黄色の正体はトウモロコシだろうか。粥の食感は、日本で口にする粥に近かった。そしてご飯の上には、生姜でもなく、梅干しでもなく、塩っけのある厚揚げ豆腐だ。

粥は薄味、いや人によっては無味に感じるだろう。塩気も無ければ、甘味も感じない。そこで厚揚げ豆腐の出番となる。スプーンで厚揚げ豆腐をちぎり、粥をすくって一緒に口へ運ぶ。すると厚揚げ豆腐の塩分が粥に絡み、絶妙な味わいになるのだ。

さて、そろそろ自分なりの味付けで食べようか……と辺りを見渡しても、タイのように調味料はない。出されたものを、黙って食べる。日本に近い感覚だった。

「アジアへ旅に出たなら、粥で朝が始まるんだ」

誰が言ったか忘れたが、その後旅を続けると、頷ける台詞だった。

日本だけではなく、東アジアと東南アジアに流れる粥文化。そこに外食文化と朝食文化が融合する。粥は時間が経つと、糊状になり、味も食感も落ちる。仕事へ行く前に、サクッと胃へ流し込む屋台の粥は、朝に最適だと知った。

そして夜に食べる粥も、消化がよく、胃や腸にやさしい。酒を浴びたあとは、ラーメンよりも、粥が良いことを旅で知った。

味やトッピング以外でも、地域によってご飯の煮込み具合に違いが見られる粥は、今後も僕の旅をより一層味わい深いものにしてくれる一品料理となるだろう。

タイ料理の難しさ

僕の好きな旅行作家のひとりに、下川裕治さんがいる。その下川さんが著書のなかで、こんなことを言っていた。

タイ料理というものは、世界の料理とは少し違うロジックのなかで発達してきた気がする。
週末ちょっとディープなタイ旅 P18より

つまり何が言いたいのかというと、タイ料理は辛く、酸っぱく、ときに甘い。ポイントは、辛い、酸っぱい……といった味が、それぞれ独立していて、互いに混ざりあうことがないことにあるそうだ。

これを数あるタイ料理のメニューのなかに当てはめると、トムヤムクンがパッと出てきた。

だが、トムヤムクンを本当に旨いと思って食べている日本人はどれだけいるのか、僕は首を傾げたくなるのだ。

トムヤムクンは辛くて酸っぱい。それ以外の表現がない。これをタイ人は味がしっかりしていると表現するようだが、同じ表現をする日本人がいるのだろうか。

僕は辛いものも、酸っぱいものも、人一倍大好きだが、トムヤムクンだけは、絶妙というよりは、微妙という気分になっていた。

そんな想いを抱きながら訪れたバンコクの食事処は、トムヤムクン味のラーメン、いわゆるトムヤムラーメンが評判の店。バンコクに住む、友人のすすめだった。


◇バンコクのトムヤムラーメンの店「Pe Aor」の場所。最寄り駅はBTSラチャテウィーです

さて、目当てのトムヤムラーメンだが、評判の期待を裏切らない味で、とても満足して帰路についた。

味は辛い、酸っぱい、甘い。あれ、甘い……?。最近のトムヤムクンは、ココナッツミルクが入ることが多い。しかしタイ料理として分類するとき、トムヤムクンはココナッツミルクが入らないはずだ。

そして麺。麺はバミーという小麦麺を選択した。これは下川さん曰く、タイ料理ではなく、タイ中華料理と呼ぶそうだ。皆が知っているチキンライスのカオマンガイや、タイ風焼きそばのパッタイもタイ中華料理の分類になる。

今回はたまたまバミーを選択したが、米麺のセンミーやセンレックを選択しても、タイ中華料理になる。

つまり、タイ料理のトムヤムクンに、タイ中華料理の麺を入れると、タイ料理とタイ中華料理の融合になったのだ。

これを旅好きの友人に話すと、

「どっちだっていいじゃん。どちらも結局タイ料理なんだから」

頷くしかなかった。

今から約20年前、東京は今ほどタイ料理屋は多くなかった。アジアン料理やエスニック料理を食べたければ、代官山にあるモンスーンカフェが定番だった。代官山で人気店だから、気分も特別に高揚した覚えがある。そこで食べたトムヤムクンは、僕にとって初めてのタイ料理だった。そのトムヤムクンの味は、ひたすら辛くて、酸っぱかった。当時はココナッツミルクなど、一切入っていない。辛さと酸っぱさだけが舌に残り、微妙な気持ちで帰路についた記憶がある。しかし当時を振り返ると、あれが本当のトムヤムクンであり、タイ料理だったんだと思った。

あれから月日は経ち、トムヤムクンにはココナッツミルクが入るようになり、タイ中華料理に歩み寄ってしまったのだ。

最近タイを旅してきた友人に、現地で何を食べたか聞いたところ、カオマンガイやパッタイ、カオカームー、プーパッポンカリーなど、タイ中華料理が口から並んだ。タイ中華料理の鍋、タイスキを食べる人はいても、タイ料理の鍋、チムチュムを食べた話は聞かない。

これはなぜだろう。考えてみた。すると幾つかの要因がでてきた。

ひとつは屋台で食事を済ます人が多かったことだ。タイ中華料理は、基本的に火を通した炒め物が多い。時間がなく、食事だけを済ます人にピッタリなのが屋台になる。そこで自然とタイ中華料理を口にしていた。

もうひとつは、タイは好きだけど、辛い食べ物が苦手な人が多いことだ。日本のコンビニなどを覗くと、激辛の食べ物が並んでいて、どれだけ辛い食べ物が好きな人が多いのかと思ってしまうが、相対するとどうやら辛いものが苦手な人が多いようである。

タイ料理はとにかく辛い。東北イサーンの料理が中心なところも要因かもしれない。パパイヤサラダのソムタム、火を通したひき肉のラープ、鶏肉のガイヤーンなど、どれも辛い。そしてこれらは屋台というより、店構えをしている飲食店に多かった。

考えた要因を、もう一度旅好きの友人に話した。

「だからどっちだっていいんじゃん?」

おいしければ、どっちだっていい。友人はタイ人気質のようだった。

街コラム

バンコクでタイ中華料理ではなく、タイ料理を気軽に食べるなら、タイ東北イサーン料理となる。そのイサーン料理店が多く並ぶ地域でBTS沿いなら、ラチャテウィーがおすすめ。

駅から2,3分の場所にある人気店、ジェーゴーイとジェーデーンの二店は僕のお気に入りイサーン料理店。どちらも店構えをしているが、歩道の卓で食事ができる。三輪バイクのトゥクトゥクのけたたましい音を聞きながら食べるイサーン料理。舌が壊れそうなくらいの辛さに汗を流し、喉元へ一気にタイビールを流し込む。すると路上から排気ガスの匂いと、物乞いの姿。あぁ、バンコクに来たんだと実感できる。

◇ラープ(左)とソムタム(右)を食べてこそタイ料理?


◇ジェーゴーイの場所。ラチャテウィー駅から行くと、手前にジェーゴーイ。その奥にジェーデーンがあります

悩む韓国のひとり飯

日本から一番近い海外ーー。

それは韓国ということになるだろう。政治の世界では、未だ厳しいやり取りが続くなか、韓国を訪れる日本人は少なくない。

そんな韓国の一人旅で困ることがある。それは食事の時だ。近年は一人で入れる飲食店も増えたが、二人以上の料理しか提供しない店も多い。やっと入った飲食店では、メインの料理が出る前に、多くの小鉢、いわゆるつきだしでお腹は膨れ上がり、お店のおばちゃんのサービスでもう一品にギブアップ。そんな経験を幾度かした。そして辿り着いた場所はというと、やっぱり屋台だった。

ただ、僕は無類の酒好きである。屋台へ向かう前に、ちょっと一杯飲むのが定番だ。場所はソウル。乙支路3街(ウルチロサムガ)にあるビアホールだ。

この通りは通称ノガリ横丁と呼ばれており、ノガリクイという魚をつまみに酒を楽しむことで有名な通りである。

ところで韓国では、ビアホールのことを「HOF(ホプ)」と呼ぶらしく、乙支路3街では1970年代末に独特のHOF文化が生まれたそうだ。そんなHOPで一人酒。一人で飲みに行くのは普段から慣れているが、これが韓国となると何となく寂しい気持ちにもなる。それはやっぱり韓国の一人で行動する人は寂しい人……という文化にある。確かに周りを見渡しても、一人酒の人はいなく、見てそれと分かる観光客もいない。

さて酒のつまみは、前途で記述したノガリクイ。食感はとても固く、珍味や燻製のような感覚だ。これを手でちぎっては、時間をかけてしゃぶるように食べる。他に気の利いた料理は無いから、ほとんどのテーブルの光景は、ノガリクイとビールか、韓国焼酎のソジュで一杯楽しむ。僕ならノガリクイを全部食べ終える頃には、ビールは5杯いける計算になる。

ビールの料金は一杯300円。しかもジョッキのビールである。そしてノガリクイは、なんと100円。たとえ一人で肩身の狭い思いをしても、ついつい足が向かってしまうのが、ノガリ横丁なのである。


◇乙支路3街のノガリ横丁の場所。駅のすぐ側で立地も良いんです

ノガリ横丁を後にすると、向かった先は鍾路3街の屋台街だ。結局のところ、屋台のような雰囲気が好きなこともあり、旅の絵図が変わらないのが、僕の悪い点でもある。

さて鍾路3街の屋台に腰を下ろすと、おばちゃんが揚げてくれた揚餃子をつまみに、一本300円のソジュで一人で乾杯。これがタイなら他の客と交わることも少なくないが、場所が韓国に変わると、ただ一人で酒と向き合わなければならない。ほっといて欲しい性格なら韓国ほどいい国はないが、寂しがりの性格には、韓国の一人旅はハードルが高い。

一人旅の韓国飯ーー。

僕にとって永遠のテーマになっている。


◇多文化通りと光の通りに股がる鍾路3街の屋台街は広大です

飯コラム

韓国人は酒をよく飲む。

昨今酒をあまり飲まない若者が増えたが、これは世界的な傾向だと思っている。だが韓国人に限っては、若者も年配も変わらない気がする。

知人の韓国人に聞いた話だが、一軒目はソジュで乾杯、二軒目はビールで休憩、三軒目は再びソジュで乾杯というから、話だけでも僕はついていけない気がする。

しかし若者の間では、この流れが少し変わってきており、シメでチキンを食べるのが流行っているのだ。それを示すかのように、ソウルの街には夜遅くまで開いているチキン屋が目立つ。

流行りに乗って友人と入ったソウルのチキン屋。メニューを開くと、1,700円前後のチキンが目立つ。チキンの量は多い。店は一人旅の気持ちなど考慮してくれないのが韓国である。

それならばと、一人で向かうのはファストフード店やフードコート、駅の飲食店が定番になる。入った店はソウル駅にあるとんかつ屋だ。韓国といえばサムギョプサルを想像する人も少なくない。サムギョプサルとは、豚のバラ肉を意味する。韓国は鶏肉も旨いが、豚肉も旨かった。ならば日本食のとんかつも旨いだろうという訳だった。

韓国を旅した経験のある人には理解できると思うが、白米は本当に旨い。日本の白米となんら変わらない。そして吸い物、サラダ、たくわんも旨い。そしてとんかつ定食に、キムチがつくところが、韓国に来たことを実感できる。

さて、肝心のとんかつだが、とにかくサイズがでかい。普通の二倍はある。だが、これにはからくりがあり、肉の厚みが薄いのである。揚げ方だって、衣のつき具合だって悪くないのに、食感がもの足りないのだ。だから肉の厚みに対して油の量が多すぎる。食後に胸焼けを覚えた。

味も見た目もいいのに、素材の厚みと食感で、料理はこんなにも変わるのかと、改めて実感したのが旅先の韓国で食べたとんかつだった。

あとがき

日本の日常の生活でも旅先でも、食は常についてまわる。しかし旅先の食は特別だ。日常の食は忙しさを理由に、妥協する食もある。だが旅先では、何を食べるかで想い出が変わってくる。大げさに言えば、その国のイメージさえも変わってくるのだ。

もし旅先で疲れて食事に向かうことが面倒になったら、コンビニ飯だって悪くない。アジアのコンビニから知る食だってある。たとえばタイのセブンイレブンの弁当だと、ガパオライスは結構イケるが、おにぎりはいまいちである。

おにぎりで言えば、香港は特にまずかった……など、まずい食に出会うことも、旅の面白さでもあると思っている。

日本の円は昨今、世界的に見て安い方向に向かっている。そこに加えてLCCとレガシーの境目が曖昧になってきた。腰を抜かすような運賃のセールもやらなくなった。そして燃油サーチャージも復活した。2019年からは、出国税も加わる。安い旅しかできない人には、辛い現実だろう。

しかし、食の貪欲さだけは失ってはならない。百円、二百円ケチって妥協する旅よりも、食べたいものを食べる旅の方がシアワセを実感できる。それは帰国して、スマホの写真を眺めても同じなのだ。

そしてこの食のルーツは?文化は?歴史は?など、想像でも良いから、ただ旨かった……だけの食事よりも、これらを考えながら口にする食事は、旅をほんの少し彩ってくれる。

写真はすべて自分で撮影した。寄稿にあたり、下川裕治さんの作品を参考にした。

2018年5月
バックパッカーに憧れて』トミー

 

Yoshi

トミーさんの旅記事は、ローカル情報が満載で、まさに海外版食べログですね・・・!

バックパッカーに憧れての方では様々なお店が紹介されているので、興味を持った方はぜひご覧ください!

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